



行動経済学が最強の学問であるという本を読みました。
本の第一印象:思ったより読みやすい!
正直、最初は「行動経済学なんて難しそう」と思っていました。ページ数も多いし、専門的な内容なのかと身構えていたんです。でも、実際に読んでみると想像以上に読みやすい!
見た目は、海外の研究者が書いた本を翻訳した本に似てますが、日本人の相良奈美香さんが書いた本なので読みやすい。日本人の感覚に合った例え話や説明が多くて、すんなり頭に入ってきました。
📖 著者プロフィール
相良奈美香さんは、日本人として数少ない「行動経済学」博士課程取得者で、行動経済学コンサルタントとして活動されています。オレゴン大学で行動経済学を専門的に学び、現在は企業のコンサルティングも手がけています。
行動経済学って何?初心者にも分かりやすく解説
行動経済学を一言で説明すると、「経済学」と「心理学」が合わさった学問です。
従来の経済学では「人間は常に合理的な判断をする」という前提で理論が組み立てられていました。でも実際の私たちの行動を見てみると、全然合理的じゃない選択をしていることがよくありますよね。
🤔 身近な例
例えば、ダイエット中なのについついスイーツを買ってしまったり、お得なセールにつられて本当は必要ない物を買ってしまったり...
行動経済学は、そうした「非合理的な人間の行動」を心理学的な視点から分析して、実際の経済活動や意思決定がどのように行われているかを研究する学問なんです。
新しい学問だからこそ面白い!体系化への挑戦
行動経済学は比較的新しい学問で、まだ完全に体系化されていないそうです。これまでは個別の理論をバラバラに覚えるしかありませんでした。
でも、この本では著者の相良さんが行動経済学を3つの要素に整理してくれています。これがすごく分かりやすい!
📝 行動経済学の3つの要素
- 認知のクセ - 人間の脳の思考パターンによる影響
- 状況 - 環境や文脈による影響
- 感情 - 気持ちや感情による影響
この3つの要素が複雑に絡み合って、私たちの判断や行動が決まっているんです。
1. 認知のクセ:システム1とシステム2の世界
最初に出てくる「認知のクセ」というのは、人間の脳の思考パターンによる影響のことです。
ここで重要なのが「システム1」と「システム2」という2つの思考モードです。
🏃♂️ システム1(速い思考)
- 直感的で瞬間的な判断
- 自動的に動く
- エネルギーを消費しない
- 感情的
🤔 システム2(遅い思考)
- 注意深く考える分析的判断
- 意識的に動かす必要がある
- エネルギーを消費する
- 論理的
日常生活では、ほとんどの場面でシステム1を使っています。だって、すべてのことをいちいち深く考えていたら疲れちゃいますもんね。
心に残った事例:メンタルアカウンティング
本の中で特に印象的だったのが「メンタルアカウンティング」という概念です。
🎭 劇場の10ドル事例
劇場で10ドルのチケットを購入した後、入場前に10ドル札を落としてしまった場合と、10ドルのチケットを落としてしまった場合、どちらの方が「もう一度チケットを買い直そう」と思うでしょうか?
答えは「10ドル札を落とした場合」の方が、チケットを買い直す人が多いそうです。なぜなら、私たちの頭の中では「劇場代の予算」と「その他の予算」を別々に管理しているから。
同じ10ドルなのに、「どの項目で使うお金か」によって感じ方が変わるんですね。これがメンタルアカウンティングです。
マクドナルドのアンケート失敗事例
もう一つ面白かったのが、マクドナルドのアンケート失敗事例です。
🍔 マクドナルドの誤算
マクドナルドがアンケートで「健康的なメニューが欲しい」という要望を多く受けて、サラダなどのヘルシーメニューを導入しました。でも、実際にはあまり売れませんでした。
なぜかというと、マクドナルドに来る顧客は疲れている時が多く、システム1(直感的判断)で選択をしているから。結局、見慣れたハンバーガーやポテトを選んでしまうんです。
アンケートに答える時は冷静に考えて(システム2)答えるけど、実際にお店で選ぶ時は直感的に(システム1)選んでしまうという典型例ですね。
2. 状況:環境が人の判断を左右する
次に紹介されるのが「状況」による影響です。人は思っている以上に状況に左右されて判断をしています。
大学選びさえ天気で決まる!?
🌤️ 天気の影響力
なんと、曇りの日にオープンキャンパスに行った大学を選ぶ可能性が高くなるという研究結果があるそうです!
人は「今日はいまいちだったな」と思った時、それが天気のせいだと考えて「実際はもっといい大学に違いない」と逆に過大評価してしまうんです。
これを読んだ時は「そんなバカな!」と思いましたが、よく考えると心当たりがありませんか?雨の日の外出先で「なんか微妙だな」と思った時、「天気のせいかも」と考えることって。
多すぎる情報は判断を狂わせる
現代人が抱える大きな問題として、「情報過多」があります。
📊 選択肢の最適な数
研究によると、選択肢は10個がベストだそうです。それ以上多くなると、人は疲れてしまって逆に「買わない」という選択をしてしまうそうです。
ネットショッピングで商品を比較している時に、選択肢が多すぎて結局何も買わずに終わってしまった経験、ありませんか?まさにこの現象ですね。
プライミング効果:何をどう提示するかが勝負
🍷 BGMの魔力
ワインショップでフランス風のBGMを流すと83%の人がフランスワインを選ぶという実験結果があるそうです。音楽というちょっとした環境要因で、人の選択がここまで変わるんですね。
これは「プライミング効果」と呼ばれる現象で、事前に与えられた情報や刺激が、その後の判断に影響を与えることです。
3. 感情:淡い感情ほど判断に影響する
最後に紹介されるのが「感情」による影響です。
意外だったのが、喜怒哀楽のような強い感情よりも、もっと淡い感情の方が人の判断に影響を与えるということです。
キャッシュレスでお金を使いやすくなる理由
💳 現金とカードの差
キャッシュレス決済の方がお金を使いやすいのは、現金を手渡す時の「もったいない」という微妙な感情がないからです。カードやスマホ決済だと、そうした感情的な抵抗が薄れてしまうんです。
ストレス買いのメカニズム
「ストレスが溜まると買い物したくなる」という現象も、感情が判断に与える影響の例です。
🛍️ ストレス買いの心理
これは「心理的コントロール感を取り戻したい」という気持ちの表れなんです。「何をやってもダメ」という無力感に襲われた時、手っ取り早く主導権を取り戻す方法として買い物を選んでしまうんです。
なるほど!確かに嫌なことがあった時の「やけ買い」って、「自分で選んで買った」という感覚で少しスッキリした気持ちになりますもんね。
なぜ行動経済学が「最強」なのか?
本のタイトルに「最強の学問」とありますが、なぜそこまで言われるのでしょうか。
🏆 行動経済学が注目される理由
- 実用性が高い - マーケティング、営業、商品開発など、すぐに実務に活かせる
- 普遍性がある - 人間の行動原理なので、どの業界でも応用できる
- 差別化要因になる - まだ学んでいる人が少ないので、知識があるだけで優位に立てる
- 自分の行動も理解できる - なぜ自分がそういう選択をするのかが分かる
実際、世界のトップ企業では行動経済学を学んだ人材の争奪戦が起きているそうです。1人の人材獲得に何千万円もの資金が動き、企業に「行動経済学チーム」まで作られているとか。
読んでみての感想と学び
この本を読んで一番良かったのは、「人にちょっと語れるくらい」の知識が身についたことです。
今まで「なんとなく」感じていた人間の行動パターンが、きちんと理論として体系化されていることを知って、すごく面白かったです。
💡 実生活での活かし方
- 自分の判断を客観視 - 「今システム1で判断してないかな?」と立ち止まる
- 環境を整える - 良い判断をするために環境を工夫する
- 感情の影響を意識する - 感情的になっている時は大きな判断を避ける
- 相手の立場で考える - 相手がどんな状況や感情でいるかを想像する
こんな人におすすめ!
📚 こんな人に読んでほしい
- マーケティングや営業に携わる人
- 商品開発やサービス企画をしている人
- 人間の行動に興味がある人
- 自分の判断力を向上させたい人
- 新しい学問に触れてみたい人
特に、ビジネスに関わる人なら絶対に読んでおくべきだと思います。お客さんの行動を理解するのに、これほど役立つ知識はないんじゃないでしょうか。
まとめ:思考の仕組みを知って、より良い判断を
「行動経済学が最強の学問である」は、難しそうな学問を身近に感じさせてくれる素晴らしい本でした。
人間の判断が「認知のクセ」「状況」「感情」という3つの要素に影響されていることを知ると、自分の行動もより客観的に見られるようになります。
また、他人の行動を理解する時にも、この3つの視点があると「なるほど、そういうことか」と腑に落ちることが多くなりました。
ビジネスでも私生活でも、必ず役立つ知識だと思います。読み終わった後は、きっと「人にちょっと語りたく」なりますよ!

